#10 「エリート魔物エシュロス」


昨日の雨の名残りが風に押し流されていく。
雲が晴れ、日の差しはじめた小学校の校庭で、オレ達は改めて向かい合った。
「なんてお礼を言ったらいいか……本当にありがとう……」
進一は涙を拭いて、にっこりと笑った。
「いや、礼なんて」
「お主が元気になってよかったのだ!」
そんなオレとガッシュを交互に見て、彼はすまなさそうに目を閉じた。
「ケガもいっぱいさせちゃって……」
「このくらいかすり傷だ。気にすんなよ」
オレはぱんぱんと服の汚れを払った。
「ガッシュが来てからケガなんてしょっちゅうだし、そっちの……」
心の痛みに比べたら。
口にはしなかったが、相手は何を言いたいのかわかってくれたようだった。
力強くうなずく。
「ガッシュくん、清麿くん。僕、包帯とか持ってるんだ。よかったら傷の手当てをするよ」
「えっ、いいぜ、わざわざ……」
「ぜひさせてほしいんだ」
その言葉にオレとガッシュは顔を見合わせた。
「あ、じゃあ……お言葉に甘えて」
「うん、まかせてよ」
進一は嬉しそうに笑い、オレ達をひょいひょいと抱え上げた。
「な、なんだ!?」
「荷物は駅のロッカーに入れてるんだ。まずはそこまで行こう」
「オレ、自分で歩けるって!」
「このほうが早いから」
その言葉通り、彼はガッシュ並みのとんでもないスピードで走り出した。
ガッシュはちゃっかり肩によじ登って、嬉しそうな声をあげている。
「清麿ー! 高いのだー!」
「ちゃんとつかまってるんだよ」
「ウヌ!」
「………」
オレはというと、このまま商店街に突入することを思って気が気でなく、その反面ちょっと……かなり……楽しいのも事実で、どうしたものかと悩んでいるうちに駅に着いてしまった。

***

ロッカーから荷物を取り出した進一は、当然のようにまたオレを抱え上げた。
「だっ、だからっ……」
「どうしたの?」
「――……せめて、あまり人がいない道を通ってくれ……」
オレのほうが折れた。
きっと悪気はないんだろうし。
彼は素直に表通りを外れて疾走しながら、適当な場所を探していた。
「まず傷口を洗わないと。……ああ、ここでいいかな。休憩って書いてある」
流れていた景色がぴたりと止まると、そこは妙に派手な外装のホテルの前だった。
「……なあ、ここって」
言う間に進一がずんずんと建物に入っていってしまい、オレは焦った。
「ちょ、ちょっと待て! ここは――」
「お客様!」
ぱたぱたと制服を着た男が駆け寄ってきた。
「子連れでのご利用はご遠慮いただいております――」
男は振り返った進一を見て硬直した。
「――おりますが――本日はサービスデーということで、こちらがお部屋の鍵になります。どうぞごゆっくり」
きびすを返し戻っていく。
「わざわざ持ってきてくれるなんて、親切だなあ」
「清麿、ここは何をするところなのだ?」
「あああああ……」
オレは進一の腕の中で頭を抱えた。
さっきの従業員にどう思われたかってのは――ちょっと考えたくない。
はたから見ればオレは強制的に運ばれて、床に下ろされるとそこはもう部屋の中だった。
「………」
「うわあ、なんだか広くていい部屋だね」
「ヌ? おお! このベッド、ものすごくよく跳ねるぞ! お主もやらぬか!?」
「アハハ……僕がしたら壊れちゃうよ」
部屋の真ん中でぼうぜんとたたずむオレをよそに、進一はさっそく床で荷物をほどき、ガッシュはスプリングの効いたベッドでびょんびょんと遊びはじめた。
荷物の中から医療品らしき包みを取り上げた進一は、その中から厚手のガーゼを出し、慣れた手つきで薬液を含ませた。
立ち上がってオレのそばへ来る。
「へ?」
進一の腕が胴に巻きつき、鼻と口を覆うようガーゼを押しつけられた。
「ンムッ!?」
「大きく息を吸って。痛み止めの麻酔だよ」
「ンンン―――!」
「そう、暴れると回りが速いんだ。よく知ってるね」
ちょ、ちょっと待て――なんで――こんな――……
強烈な刺激臭に頭がもうろうとしてきて、オレはずるずると肩を落とした。
「清麿!? どうしたのだ!」
足にガッシュが飛びついてきている……
「傷を洗うときにかなりしみるだろうから、痛くないようにちょっと眠ってもらったんだよ」
「ウヌウ……」
「さ、みんなまずお風呂だ。この格好じゃ、部屋が汚れてホテルの人に迷惑がかかっちゃうからね」
オレは倒れないよう進一に抱きかかえられながら服を脱がされ、戸惑っているガッシュと三人で浴室に入った。
進一が風呂に湯を張りはじめ、もうもうと蒸気が立ちのぼってくる。
浴室の壁に背を預けて座らされたオレは、ガッシュが心配そうに覗き込んでいるのはわかったが、体に力が入らず、指一本動かせる状態ではなかった。
体がだるくて熱い。そう感じる頭も霞がかって、半分眠ってるみたいだ。
様子が違ってきたのは、あぐらをかいた進一の足の間に座らされ、体を洗われてからだった。
進一は傷を心配して、泡を絡めた大きな手でやさしく撫でるようにしてくれていたが、オレにはその刺激がひどくむずがゆく、自分でもおかしいほど身もだえしていた。
「あぁっ……はぁっ……」
「清麿くん……?」
足を引き寄せてがくがくと肩を震わせるオレに、進一は気づいたらしく、
「――――」
一瞬の間があって、泡だらけの手が遠慮がちに触れてきた。
「ん」
張りつめた形をなぞられ、ぞくぞくと痺れが走る。
オレの反応に背後の体が緊張に硬くこわばったが、彼は意を決してオレを包み込み、片手にすっぽり納めたそれをくちゅくちゅと揉みしだきはじめた。
「あっ、あ……あうっ……」
そのつもりがなくても、体格に見合って力の強い指先は、ときに容赦なく押しつぶしてくる。
オレはそのたびにびくりとのけぞり、腰に回された進一の腕にしがみついて、じりじりと脂汗を浮かべた。
「く……」
「清麿くん――僕……」
「………?」
進一は切羽詰った声をもらしたあと、オレの肩をつかんでくるりと反転させた。
向き合うと進一も勃っていて、彼はひざ立ちになってそれをつかみ、オレの肩を――顔を――うむをいわせぬ力でそこへ引き寄せた。
「んぐっ……」
口に押し込まれたそれは大きくて、すぐにつかえてしまう。
進一はオレの頭をつかんで腰を振り出した。
「んッ、ん」
しかし元々限界が近かったようで、彼は何度もしないうちにうめいた。
舌の上でびくびくと跳ねる感触、口の中に溢れる液体――
「かはッ」
オレは解放されると、床にくずれて咳き込んだ。
「清麿!」
「ガ……ガッシュ……」
「清麿、清麿がまるで別人のようで……私は……」
がたがたと震えるガッシュを、オレはなんとか抱きしめた。

***

「……男同士のうえ、子連れなんて変な客だと思ったが、やることもかなりヤバかったな」
各部屋に備え付けの監視カメラ――その映像を映し出しているモニターの中では、少年が医薬品についての講釈をたれている。
『いいか? 麻酔の鎮静作用ってのは、精神を安定させるかわりに、食欲や、せ……性欲を増加させる場合もあるんだ。素人がほいほい使っていいもんじゃ……』
大男は床に正座させられ、小さくなって彼のお説教を受けていた。
「で、録画はしたのか?」
「もちろん」

(2003.08.24)

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アニメ感想/今回は清麿を気持ちよく気持ちよくさせてあげる予定でしたが、一人称「僕」の進一が清麿をリードしていたらアポロと見分けがつかなくなってしまったので急遽ヘタレにしました。清麿、そんな理由でイかせてもらえず。

アニメは進一の登場シーンに吹き出しました。あの笑顔!その効果音!後半でもかなりヤバイ彼のアップがありますが、それはまたのちほど。尾行をしている赤本コンビは言うまでもなく可愛く、さらに一人で尾行を続けたガッシュはえらい男前でした。登場するモブの子供達がデジモンちっくでしたが、あ、同じチャンネルか。あれ?しかも同じ時間なのね(今さら

清麿がエシュロスを殴ったあとの、進一の笑顔。はい、ヤバイアップ。呪文で吹き飛ばされて進一に本を奪われてしまったときの、ひざをついた清麿。…実はこのシーンで清麿受けに目覚めました。それまでは普通に見てました、ええ。でもあのシーンで清麿の口に何か突っ込みたいと思った人は私以外にも絶対いるはず。